| 【タイトル】 | ・・・【座頭と女】 |
| 昔なあ。 | |
| あるとこれえ、嫁じょうと姑さんの居っとこいい、座頭(ザッツ)さんが宿していたとこいが、 | |
| 姑さんの居らんうちい、嫁じょうが、 | |
| 「座頭(ザッツ)うやっでえ、包丁でまで切らんばって、歯でかじって、大根のお汁(チュイ)も煮て食べさせえ」 | |
| と思うて、囲炉裏(ユルイ)いなあ、釣いなべかけとって、寒かもんやっでえ、 | |
| 股もひっぱっとって、座頭やっで、目えなあかからんと思うて、そら。 | |
| そして、その嫁じょうが汁焚えて食すっとこいなあ、座頭さんに。 | |
| そして、さあ、姑さんがきて、 | |
| 「もう汁やあ煮あったか」て、 | |
| 「もう煮やったろう」ていうて、ちいで食うだんになったとこいが、座頭さんが、 | |
| 「婆さん、婆さん、今夜ん汁やあうまかったろう、焙(アブ)いまんじゅうに歯包丁で」ちゅうて、 | |
| 座頭さんが言うたちゅうが。 | |
| もう、そい限いのむかあし。 | |