【タイトル】 | ・・・【嫁の歌詠み】 |
昔なあ。 | |
あるとこれぇ、兄弟二人おって、兄(アヌウ)の方が馬鹿でなあ、。 | |
何時いなってもお嫁(メ9も貰うおうとも言わんと、親も心配して、次男も年頃(ゴレ)えないが、 | |
兄(アヌウ)におめぇ持たせねば、おめぇ持っ時あ過ぐいが、て、 | |
まあ家内中寄って、おめぇ持たすい話しいなって、兄もおめぇ持ったちゅうとこい。 | |
そしたとこいが、その兄どんが、一向、おめぇにかからんとてなあ。 | |
そしたれえ、おめぇが歌詠うだて。 | |
「沖なかに大船は繋ぐとも、誰じょ一人(イチニン)乗い手なし、乗い手なし」て。夜中えなれば唄うとて。 | |
殿じょうどんがそいば聞いとって、山(ヤメ)え行たとってえて、次男に、 | |
「次男、次男、おいげんおめえな、夜中になれば歌うとうて、気が違うとっとじゃああなかたろうか」 | |
て、弟が兄に聞くとて、 | |
「何んちゅうて唄うとか」 | |
「沖なかに大船は繋ぐとも、誰じょ一人(イチニン)乗い手なし、乗い手なし」ちゅうて唄う」て | |
「そらあ兄(アヌウ)、兄、気の違うとっとやなかたいが、お前がその下ん句に | |
「午後の東風(コチ)吹け、乗い衆(シ)があるぞて、東風吹け、東風吹け」ていうて唄うもんよ | |
ちゅうたとこが、「へえ、そげん歌えばよかとか」て、 | |
もう、そい限いのむかあし。 | |