| 【タイトル】 | ・・・【和尚と小僧】 |
| 昔なあ。 | |
| お寺に和尚さんと小僧さんの居いやって、もう庭一杯に枇杷(びわ)がなっとってなあ。 | |
| 枇杷がないばって、和尚さんが小僧さんに一つも食べさせやらんとて。 | |
| そいで小僧さんが、 | |
| 「何時か和尚さんが居らん時、おいが、腹一杯枇杷ばちぎって食(カ)もう」って思(オンム)うっておったとこいが、 | |
| 和尚さんが、昼寝(ヒンネ)して、ぐうぐういびきけえて、もう覚えじん寝とっとてなあ。 | |
| 「さあ、今んうちい、枇杷ん木い登って食(カ)まねばならん」ちゅうて、 | |
| 一番太か、うまか枇杷ばちぎって食うとったとて。 | |
| そして、その食うた種は覚えじん寝とる和尚さんの尻(ジゴ)ん巣ん中(ナケ)え詰め込うでくれてな。 | |
| そいたとこいが、一時(イットキ)してから和尚さんが目の醒めてみて御堂に出たとこいが、枇杷の無かちゅうでえ、 | |
| 「こらこら、小僧、お前(マヤ)あ、あの枇杷あどげんしたか、」 | |
| 「知らん」て言うたとこいが、 | |
| 「知らんわけのあいもんか、お前が一人で食うたたろう」 | |
| 「私(アタシ)や、食(カ)まん」 | |
| 「んんにゃ、食うた」ちゅうて、言い合いになってな、 | |
| そいたとこいが、そんなら二人で糞(クソ)ふいごろうして見ろう、ちゅうこてえなってな、 | |
| 「よおし、そんならあ、俺(オラ)あ今ずい寝とったでえ、その枇杷あ食(コ)うどらんでえ、 | |
| 糞ふいほろうするっ」ちゅうて、はじめたとこいが、その和尚さんが尻(ジゴ)から枇杷ん種がもう、 | |
| ぼろぼろ出て来て、そいで小僧さんが、 | |
| 「そら見たか、先生俺(オレ)え食うた、食うたちゅうばって、一つっちぇか、 | |
| そん枇杷ん種ん糞はふらんばって、和尚さんが、種ごうし飲うでしもうとっでえ、 | |
| 糞え出て来たじゃああなかか」ちゅうて、言うたたっちゅが。 | |
| もう、そい限いのむかあし。 | |