【タイトル】 | ・・・【勝々山】 |
昔なあ。 | |
あるとこれえなあ、爺と婆とおって、その、田打ちけえ爺さんが行たて、したとこいが、。 | |
たまの太か爺さんで、田打ったんびい、左の方に行たてブラブラすいもんやでえ、狸が、その、 | |
「あの爺の田打っちんちょう見れ、左がっかい、がっかい。右がっかい、がっかい」つう、 | |
囃子かけてくれたとてなあ、狸が。そしたれええ、 | |
「よおし、わや、そげんいうて、口かなえ、おいが打っ殺えてくるっ」て、いうて、 | |
その何か投げた拍子い、その狸がまあ、死んだ真似してみせて、そして行たて、 | |
「ああ、狸が死んで臭さか」ていうたら、ほんにその狸が死んだごとして見せて、爺が括ってきて、 | |
「婆、婆、こらあ、今日(キュウ)は狸が口かのうだでえ、打ち殺れえて、きびってきたでえ、 | |
晩にゃあ狸の味噌汁(スイ)やっ」て、いうたいば、婆が、 | |
まあ、さああ、米搗(ツ)かねば、米の無かでえ」ちゅうて、米搗いてしよったとこいが、狸が泣くて、 | |
「爺、解(テ)えてくれえ、婆、解えてくれえ」ちゅうて泣くもんやっでえ、 | |
「爺からがらるっでえ、解えたあくれん」いうばって狸が、その、泣くれえ、解えてくれたいば、 | |
約束の米は搗かじんおってえて、婆ば杵(キネ)で打って死なけえて、ほひて、早速、婆え化けてえて、 | |
婆ば味噌汁い炊(テ)えて、ほひて、田打ちから爺がきて、 | |
「狸汁ば食(カ)せえ」ていうて、腹いっぺえ食うてしたとき、その狸が、 | |
「あの爺のそさ見れ、あの婆ばいち食うて、頭は戸棚(トダネ)え、あっとこれえ」ちゅうて、 | |
いうもんやっでえ、爺が戸棚ば開けて見たとこいが、頭ばっかい婆がとの入っとっでえ、ほいで爺さ、その、 | |
悔(クヨ)うで泣きよっとこれえ、兎が出てきて、 | |
「爺、爺、おまや、なひきゃあ泣くか」て | |
「狸が婆ば打ち殺えて、俺ぇ煮て食(カ)せた」ていうたとこいが、 | |
「おいが、仇討つけ行くれえ泣かじんおれ」て、そしたいば、 | |
「狸、遊(アス)ぼうい」つうて、山そのへ行たとこいが、狸が出てきて、その山へ行たとこい | |
「今日は天気も良かで、舟造くって遊ぼうい」ていうたいば、 | |
「うん」ていうて、ほの、「舟あ何の舟ば造いか」いうたいば、「おらあ、こうかん舟造る」て兎がいうたいば、 | |
「おらあ、舟ば造いがならんでえ、その泥舟ば造ろう」ちゅうて、泥舟造って、乗って行たとき、 | |
もう泥が溶けて、狸が沈(シズウ)で、そって、「兎(ウサアギ)助けてくれえ、助けてくれえ」て狸がいうとば、 | |
「あんが、婆ば打ち殺えた罰や」ちゅうて、爺がとこれえ、行たてえて、 | |
「爺、爺、狸は海(ウウミ)い沈めてきたでえ、こいから婆が代(カオ)いなってえて、おいが加勢すっでえ、 | |
泣くなちゅうて、その、泣きやませたちゅうたあ。 | |
もう、そい限いのむかあし。 | |