| 【タイトル】 | ・・・【姉と妹の栗拾い】 |
| 昔なあ。 | |
| おっかんと二人の娘があったちゅう。あのう姉の方な、前のおっ母(カ)んの子で、そん妹(イモ)たあ、 | |
| あが子で、もう姉が憎くうしてたまらじん、どがんかして殺さねばと思(オンム)たばって、 | |
| ほんとうに殺せば、あが身が恐(オト)ろいかもんやっでえ、考えたあげき、栗拾うきゃあ行かすい事ば、 | |
| おんいめえちいたたっちゅうたあ。 | |
| そん時姉え持たせた袋(フクレ)えにゃあ、袋の底ば切って穴ばほぎゃあてええて、 | |
| 妹に持たせたたあ、穴ば塞(フ)しゃあでやったたっちゅが。そいで妹の方な栗の溜まいばって、 | |
| 姉んたあ、ちっとも溜まらんやったて。そいで妹んたあ早う袋一杯になったもんやっでえ、 | |
| 先(サ)あきい戻いもしたちうが。とこいが後(アテ)え残った姉は、いつづいなっても、 | |
| 一杯にならじん、夜の入いもてえなって、暗うなったもんやっでえ、もう仕方んなかでえ、 | |
| 戻ろうかと思(インム)うて、途中まで来よったいば、化物(オカメン)の出て来て、 | |
| かまれそうになって、通いがならやったでえ、そいで泣きよったとこいが、どっからかじいさんが出て来て | |
| 「あっかあ、なひきゃあ泣くとか」て言うたっちゅたあ。 | |
| 「栗ば拾うても、拾うても一杯にならじん、泣きよっとよ」ちゅうたいば、 | |
| 「そんならあ、俺(オイ)がいさみゃあ来(ケ)え」ちゅうて、じいさんが連(チ)れて行たてなあ、 | |
| そして一晩泊まらせやいもした。とこいが、おっかんな何も知らんもんやっでえ、 | |
| いよいよおかめんから、食(カ)まれたたろうと思うて、あくい朝、もどって来た、 | |
| あが子の妹の方ば連れて行たてみたいば、誰もおらんやった。 | |
| そうしとったいば、じいさんが出て来て言うにゃあ、 | |
| 「何ばお前(マイ)どまあ探しよいか」と言うたいば、母が、 | |
| 「妹と栗拾うきゃ来ておって、いつづいでも、姉ん方がもどって来んもんやっで、探しきゃあ来たとよ」 | |
| て言うたたっちゅが。そひたいば、じいさんが、 | |
| 「そがんやっとな、こん袋え見覚えんあいか、おらあここでこん袋ば拾うたたがあ」妹が言うにゃあ、 | |
| 「「こらあ、おいがん姉さんのとや」って。母どんなたまがった。じいさんが、 | |
| 「ほんとうにそがんかな」て母どんに聞いたいば、 | |
| 「そがんやる」て言うてなあ。じいさんが言うにゃあ、 | |
| 「もうそん子がこの辺におれば、おいが連れてくいばって、こがんことば二度としゃっとか。 | |
| 袋の尻のほこれとってえ、どひこ拾うたちゅうちゃあ、溜まらんわけじゃあなっか。 | |
| 子供に物ばさすっとうきゃあ、気い付けてさせんと、こがんめえ、逢うたっどう」 | |
| 「今からそがん事(コタ)あしもさんでえ」て言うて、ことあいばゆうたちゅうが。 | |
| もう、そい限いのむかあし。 | |