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・甑島には かすみがかかる 私しゃあの娘に 気にかかる |
・かけたかすみは 一度は晴れる 切れた縁なら 結ばれな |
・切れて結んで 結んで切れて つなぎだらけの 縁のつな |
・縁とばし思わにゃ うんがよなやっと 男ぶりでも よかやっか |
・男ぶりでは 世ぐらしゃでけん 野でも山でも 稼がねば |
・山は焼けても 山鳥りやとばな 可愛吾が子に ひかれされて |
・あの娘可愛や 椿の花か 夜毎思いが ますばかり |
・思いこがして 沖眺むれば 影も見えない 主の舟 |
・舟のともろに うぐいすとめて 浜は大漁と なかせたい |
・泣いてくれるな 出舟のともで 沖でろかいが 手につかん |
・沖のかもめに 潮どき聞けば わたしゃ立つ鳥 波に聞け |
・波の音聞て ねむれん夜中 涙おとした 港(かわ)の水 |
・水がのみたい あの家の水が 水になずけて 顔見たい |
・見てもみあかぬ 千たび見ても 合わせ鏡と さまの顔 |
・さまは三夜の 三ヶ月さまよ よいにちらりと 見たばかり |
・白さぎみたよな あの娘こほれて からすみたよな 苦労する |
・苦労しやんせ 心棒すれば やみ夜もすぎれば 月となる |
・月のちょいと出を 夜明けと思て 様を帰えして 気にかかる |
・気にかけなさるな 世けんのうわさ 心しずかに まつがよい |
・心うきうき ここまで来たが 何か淋しい 一人旅 |
・一人米つく あの水車 たれをまつのか くるくると |
・来るか来るかと 波止場でまてば かわい千鳥は 沖へゆく |
・沖の平瀬に どんと打つ波は なぜか出船の 邪魔をする |
・出船近こなる 甑に帰る 会えるその日を まつばかり |
・松がさかえて あの家が見えん 好きなあの娘の あのきりょう |
・きりょうよかとて いばるな娘 どうせ一度は ちる花よ |
・どうせちるなら このわしに なびく気持ちは ないのかい |
・気持ちおさえて 話して見やれ 情よう知る 島娘 |
・島をはなれる この身のつらさ うけた情は わすられん |
・わすれられよか あの夜のことを 月を見るたび 思いだす |
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